
タワマン節税で路線価評価が否認された背景は?最新動向と今後のリスクも解説
「タワーマンションを活用した節税」にご興味はありませんか。近年、相続税対策としてタワーマンションの購入を検討する方が増えていますが、2022年には「路線価による評価の否認」が大きな話題となりました。これにより従来の節税スキームには見直しが求められています。本記事では、タワマン節税の基本から制度改正、実際のリスク、今後の注意点まで、どなたにも分かりやすく丁寧に解説いたします。今後の相続対策の一助としてぜひご覧ください。
タワマン節税とは何か、その基本の仕組みを理解する
「タワマン節税」とは、タワーマンションを購入し、相続や贈与の際に、その相続税評価額が市場価格よりも低くなる点を利用して、相続税の負担を軽減しようとする手法です。特に評価額が市価の三割程度になるケースもあり、大幅な節税効果が期待されてきました。高層階であるほど面積按分で土地価値が小さくなる点や、建物部分の固定資産税評価が時価より低くなる点が主な要因です。例えばある裁判例では、市場価格に対し評価額が25%程度で、相続税をほぼ無税にできたケースもありました。
| 評価対象 | 評価方法 | 市場価格との乖離の理由 |
|---|---|---|
| 土地(敷地利用権) | 路線価×持分面積 | 高層マンションほど持分面積が小さく、評価が低くなる傾向 |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 再建築価格に基づき、実勢価格を十分に反映していないことが多い |
| 結果 | 評価額が市場価格より大幅に下がる | 相続税負担が軽減される |
このような仕組みを背景に、「タワマンを利用すれば相続税が減る」として、一定以上の富裕層を中心に注目されてきました。しかし、その仕組みが時に「不当な税負担の不公平」として問題視されるようになってきています。
2022年の最高裁判決により「否認」された背景とその意義
2022年4月19日、最高裁は「タワマン節税」として知られる、相続税評価額を路線価や固定資産税評価額で低く申告する手法を「著しく不適当」として認めず、国税庁による再評価を正当と判断しました。具体的には、購入時約13億8千700万円のマンション2棟を、評価額3億3千万円として申告した事案に対し、国税側は鑑定評価で約12億7千万円と再評価し、更正・追徴課税を実施、その判断が最高裁で確定したものです。この判断は、節税モデルに対する明確な“待った”を示すものとなりました。
本判決で基盤となったのが「財産評価基本通達第1章総則第6項」、いわゆる「伝家の宝刀」とも呼ばれる規定です。この規定では、通達による評価が著しく不適当と認められる場合、国税庁長官の指示に基づく別の評価が可能とされています。タワーマンションでは評価額と実勢価格に大きな隔たりが生じ、税負担の公平性に問題があるとの判断が下され、この例外規定が適用されました。
さらに、本判決が示したのは、従来の路線価・固定資産税評価による算定が、必ずしも相続税上の適正評価とは言えないという点です。節税目的が色濃く見られる購入や、借入による取得などの事情と合わせ、多重に評価隔たりが認められれば、国税当局は鑑定評価を用いて実勢に近い評価額を主張し得る、という前例を築いた点に本判決の意義があります。
以下の表は、本判決の要点を整理したものです。
| 評価方法 | 通達評価額の特徴 | 最高裁の判断 |
|---|---|---|
| 路線価・固定資産税評価 | 節税効果は高いが、実勢価格との差が大きい傾向 | 評価方法として認められるが、差が著しい場合は例外対応 |
| 財産評価基本通達第1章総則6項 | 通達評価が不適当と判断された場合に限り適用 | 今回の事案で適用を認め、相続税評価額の修正を支持 |
| 税務上の意味 | 従来の節税モデルに対する警鐘 | 節税を主目的とした購入には慎重な評価が必要 |
この判決により、タワーマンションを用いた相続税対策が“租税回避”として強く牽制され、従来型の節税スキームが大きく見直されるきっかけとなりました。
2024年以降の評価方法見直しと現状の節税効果
2024年1月1日以降、タワーマンション(以下「タワマン」)の相続税評価に関して、従来の路線価・固定資産税評価額による評価方法に見直しが入りました。評価額が時価の60%未満と判断される場合には、評価額を時価の60%となるよう補正する制度が導入されました。その結果、評価額が従来より高くなり、節税効果が縮小しています。例えば、これまで時価1億円のタワマンが評価額3,000万円だったケースでは、改正後は最低でも6,000万円となるよう補正されます。
具体的には、国税庁が定めた「区分所有補正率」が導入され、高層階・築浅・敷地持分割合の小さい住戸ほど、補正幅が大きくなる傾向にあります。評価額は、従来の評価額に補正率を乗じて計算され、市場価格との乖離を縮小する方向に動いています。
評価方法改正後もタワマンによる節税効果が完全になくなるわけではありません。評価乖離が依然として存在するため、節税可能性が残るのは事実です。ただし、節税効果は従来より明らかに小さくなっています。そのため、節税対策としての有効性を評価する際には、改正後の評価水準や個別条件(築年数・所在階など)を慎重に見極める必要があります。
下表では、改正前後の評価額の変化と現状の節税傾向を簡潔にまとめています。
| 比較項目 | 改正前 | 改正後(現状) |
|---|---|---|
| 評価額と時価の乖離 | 時価の30〜40%程度 | 最低でも時価の60%に補正 |
| 節税効果 | 非常に大きい | 縮小したが残る場合あり |
| 評価額調整方法 | 路線価・固定資産税評価のみ | 区分所有補正率を乗じて評価 |
タワマン節税に関わるリスクと注意点を押さえる
タワーマンションの購入を「節税対策」として検討する際には、慎重な判断が不可欠です。以下に主なリスクと留意点をご紹介します。
■「否認リスク」として問題となりがちな要因について整理します。例えば、相続発生直前の購入や、相続後すぐの売却は明らかに節税目的と見なされやすく、租税回避行為として追徴課税の対象となるおそれがあります。実際、相続から間もない短期間での売却があった事案では、税務署により否認され、追徴課税が課された事例があります(通達第1章総則6項に基づく判断)。
■タワマン節税を検討する際には、専門家との連携が大切です。税務調査に備えて、「購入資金の出所やローンの存在」「居住または賃貸の実態」「評価計算の根拠」が明確になる資料を整備し、税理士・司法書士・不動産鑑定士ら専門家に評価方法を確認しておくと安心です。
■制度の今後の見通しと制度変更への注意喚起も欠かせません。たとえば、2024年以降は相続税評価額が時価の6割未満にならないよう制限が入り、節税効果は従来よりも小さくなりました。また、階層別補正や土地持分の精緻化など評価ルールが見直されており、評価額が上昇する傾向が見られます。
■以下の表は、リスクとその対応策を整理したものです(項目数:3つ)。
| リスク | 具体例 | 対応策 |
|---|---|---|
| 否認・追徴課税 | 購入直後の相続、即売却など | 購入意図を明確にし、長期保有の実績を持つ |
| 制度改正への対応不足 | 評価額が上がり、想定した節税効果が得られない | 最新の通達や法改正を把握し、評価を適時見直す |
| 資金計画と収支リスク | ローン返済や管理費など保有コストが重くなる | 資金計画を専門家と共有し、収支バランスを検証する |
タワーマンションによる節税は一見魅力的ですが、制度変更や税務上の判断により、想定外の負担を招くことがあります。節税目的だけに偏らず、資産の保全や資金の流動性、将来の対策まで含めた総合的な視点で検討されることをおすすめします。
まとめ
タワーマンションを利用した節税策は、評価額と市場価格の差を利用する仕組みにより注目を集めてきました。しかし、令和四年の最高裁判決以降、路線価による評価手法が否認される事例も現れ、従来のモデルが通用しづらくなっています。特に令和六年の制度改正後は評価額が市場価格の六割程度となり、節税効果も縮小傾向にあります。今後は、制度の動きを踏まえ、安易な節税対策ではなく、リスクや手続きの複雑さも考慮しながら、必ず専門家へご相談いただくことが大切です。
