不動産売却のインスペクションとは?メリットと費用について解説

不動産売却のインスペクションとは?メリットと費用について解説

「中古物件を少しでも高く売るためのコツはある?」と疑問を持つ方も少なくありません。
中古物件の場合、物件の状態や設備不良の有無を適切に把握するための調査をするかどうかで、購入希望者が見つかる可能性や売買代金が変わってきます。
本記事では、不動産売却におけるインスペクションとはなにかをお伝えしたうえで、メリットと費用について解説します。

不動産売却のときのインスペクションとは

不動産売却のときのインスペクションとは

新築思考が進んでいたり、人口減少による空き家問題が深刻化していたりするなかで、日本政府は中古物件の流通を活発化させるための取り組みに力を入れています。
数ある施策のうちの1つが、不動産の劣化状況や欠陥の有無を調べて、修繕の必要性を判断するインスペクションと呼ばれる調査方法です。
ここでは、宅地建物取引業法が定めるインスペクションの主な特徴を解説します。

国が定める基準にしたがった既存住宅状況調査

専門的な知識を持っている調査士が、国の定める基準に則り物件調査をするため、売主や買主のどちらかが有利になるような結果を出すような事態にはなりません。
民間企業のなかには、ホームインスペクションや住宅診断などの名称で建物状況調査をおこないますが、宅地建物取引業法に則っておこなわれる調査を依頼するようにしましょう。

仲介業者がインスペクションの説明と専門家の斡旋

引き渡し後のトラブルを未然に防ぐために、仲介業者は売主と買主にインスペクションに関する説明をするように義務付けられていますが、調査自体が義務化されているわけではありません。
売主が実費で調査をする場合、インスペクションをおこなうタイミングは、仲介業者に査定を依頼してから販売活動を始めるまでの期間が理想的です。
実施前の流れとして、まずは仲介業者に建物の査定をしてもらい、媒介契約を締結します。
媒介契約締結時にインスペクションに関する説明があるので、希望する場合は既存住宅状況調査技術者であるインスペクターを斡旋してもらい調査をしてもらいます。

調査結果をもとに修繕や販売活動を実施

不具合がなければ合格、不具合があれば不合格の結果が出るので、合格すればすぐに販売活動をはじめられますが、不合格になったら修繕するか検討しましょう。
不合格の状態でも、不動産の状況を理解したうえで購入希望者が現れれば、問題なく売買契約が締結できます。
ただし、不合格の状態は欠陥もしくは不具合を抱えている状態なので、売出価格を値下げするなどの見直しをしなければなりません。
そのため、値下げをせずに販売活動を希望するのであれば、修繕をしてから市場に出すようにしましょう。

不動産売却前にインスペクションをするメリットとは

不動産売却前にインスペクションをするメリットとは

不動産売却前のインスペクションをおこなうメリットは、物件の価値を把握できる・安心が保障される・引き渡し後のトラブル防止になるの3点です。

物件の価値を把握できる

まず、仲介業者の査定は、築年数や間取り、立地などの表面的な情報のみで評価されますが、既存住宅状況調査方法基準に則り調査をすれば、建物の細部の状態まで評価されます。
定期的に修繕やメンテナンスを繰り返していた物件は、築年数に対して実際の建物の状態が良好な可能性があるので、細かく調査をしてもらうと物件価値が上がる可能性が高いです。
築年数に対する劣化度合いが同等だったとしても、築年数以上の劣化や老朽化は進んでいないと証明できるので、買主にとってはプラスの情報になります。

安心が保障される

続いて、買主視点になったときに、専門家の調査が入っている物件の方が安心して購入できます。
現在は契約不適合責任が改正されたため、以前よりも売主の責任負担が大きくなっているものの、中古物件の購入に対して不安要素を抱いている買主は多いです。
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会の消費者アンケート調査では、「希望価格で売れた」「買い手が早く見つかった」「安心して売却できた」などポジティブな声が寄せられていました。
日本政府が定めている基準に対して調査結果を出しているので、企業ごとに結果がブレない点も、買主としては安心して購入できるかどうかの判断材料になります。

引き渡し後のトラブル防止になる

最後に、中古物件の場合は、引き渡し後に物件の欠陥や設備不良が発覚すると、買主は売主に対して損害賠償請求ができるため、トラブルに発展するケースも多いです。
契約不適合責任は、売主が故意に隠していた不具合や欠陥はもちろん、把握していなかった箇所まですべて損害賠償が売主に課せられます。
つまり「知らなかった」では、損害賠償や契約破棄を免れられません。
後からトラブルにならないためも、雨漏り・シロアリ・屋根の腐敗など生活しているときに気付ける箇所から、発見が難しい箇所まですべて専門家に調査してもらうと安心です。
調査したうえで不具合や欠陥があれば、売主は修繕するかどうかを判断しますが、買主が不具合や欠陥に対して了承している場合はそのまま売却できます。
物件の不具合や欠陥は、すべて売買契約書に記載したうえで契約締結になるので、記載されている内容に対してあとから契約不適合責任を問われる心配はありません。

インスペクションにかかる費用とは

インスペクションにかかる費用とは

インスペクションにかかる費用とは、検査会社・物件タイプ・広さによって変動します。

物件タイプによる違い

マンションの場合、面積によって金額が変動するケースは稀で、一律5万円前後のケースが多いです。
一戸建て住宅の場合は、約165平米未満で約45,000円、165~250平米で約5万円、250~500平米で約65,000円と、面積ごとに異なる金額設定をする検査会社が多いです。
ここでご紹介している費用は、宅地建物取引業法が規定するインスペクションを指しています。
宅地建物取引業法が規定する調査方法では、既存住宅状況調査技術者講習を終了している建築士が既存住宅状況調査技術者として調査をおこなえます。
既存住宅状況調査技術者は別名インスペクターとも呼ばれていますが、正式な過程を踏んだ方だけが国に登録できるので、自身が調査に携われるわけではありません。
民間企業が独自で住宅診断やホームインスペクションを実施しているケースもありますが、国の指定する講習を受けていなかったり、独自基準で調査していたりする可能性があります。
つまり、物件に問題ないといわれていても、後から不具合や欠陥が発覚したり、物件に問題がないように必要以上の修繕を勧められたりする可能性があるので注意が必要です。
もしも、物件に関する調査を受けようと考えているのであれば、必ず宅地建物取引業法が規定する調査を斡旋してもらうようにしましょう。

費用負担者

費用負担に関しては、売主が実施するのであれば売主、買主が実施する場合は買主が支払います。
基本的には、どちらが費用を出して調査をしても良いですが、買主が調査を希望する場合は売主からの承諾を得なければなりません。
買主の希望で勝手に売主の建物を調査する権利はないので、仲介業者を通して相談してみましょう。

まとめ

これから中古物件の売却を検討しているのであれば、インスペクションの実施も前向きに考えてみるのがおすすめです。
宅地建物取引業法が定める基準で、物件の不具合や欠陥の有無を調査してもらえるので、問題ないと判断されれば、売買代金が高くなったり、購入希望者を早く見つけられたりします。
調査を依頼する方が費用を負担する必要がありますが、引き渡し後のトラブルを防ぐことに繋がるなど、スムーズな販売活動に役立ちます。